コト、モノのデザインにたずさわって 思うことは, ‘人の習性‘ への理解の大切さ

服の前合わせで、左右が存在する。 いわゆる洋服はというと男女で異なる。その理由とは? 経緯をウィキペディアで探てみたが、明快な解が見つからない。古来の着物(呉服)は左前に着るのが慣わし。この逆 `右前`とするのはお棺に収まる場合のみ。理由はともあれ、長年の習慣である。いずれにしても、誰もそう疑問を持たずで生活は成立している。しかしである が. . . 誰しも疑問すらもたない事象、慣わし、普段の生活でのわずかな違い、このことは ‘‘人の習性‘‘ に深く係わっているのであろう。

人の習性の一つとして ‘利き手‘ がある。 世界中の右利きの割合はおおむね90%前後、左利きの割合は10%前後という。 利き手違いの道具としてよく知られているのがハサミ。 コト、モノ をデザインするにあたって、そうした「人の習性」への深い理解なしには良いデザインは生まれないのでは. . .との信念から長年仕事を続けている。 

特に安全操作が重要な医療機器のデザインで、操作部やインターフェイス部では細心の気配りが求められる。

直感的に人がこうだろうと感じ、操作の手を進めようとするとき、この瞬間が大切で、正しい操作を誘導するようなデザインとすべきなのであろう。タッチパネルのUI(ユーザーインターフェイス)を含めてプライオリティーの高いスイッチやレバー、そしてツールを置くスペースや引っ掛けるフック等は90%の右利きのユーザーを前提にユーザビリティの考えを進めることになる。そうしたインターフェイスのデザインで、ここに一つの面白い例を紹介したい。 

コンタクト・レンズのケースデザイン

コンタクト・レンズは液体の中にパックされていて、ケースから取り外す時にシールドされたフィルム(ラベル)をはがすことが、ソコソコ面倒ですが、しかし必要な動作。ユーザビリティの高いアイデアが必要となる。剥がし易い工夫が。そして、そのラベル、ケースの形状はシンメトリーにデザインしてあるので、右利き、左利きを問わず、の工夫となっている。 液体をこぼすことなくレンズをケースから取り出す為には、ラベルを剥がすときにケーズ全体がテーブル上で水平になっていて欲しいのである、そこで、この指で抑え、ラベルを引き上げるときの大事な脚の役をしているアイデアとなっている。

ADC社デザイン Client: HOYA / 2008

この例のように、小さな一つの違いが大きな違いとなる、すなわち、いいデザインとそうでないものとの分かれ目に。 kana?